日本語と英語の発音の違いを知ろう!

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「日本語の勉強を始めたばかりですが、発音は英語より簡単そうに思います!」
日本語学校の門を叩く学生たちから、そんな声を耳にすることがあります。確かに、日本語の音の種類は、英語や他のアジア圏の言語に比べると非常に少なく、シンプルに思えるかもしれません。英語のように「R」と「L」の違いに悩む必要もなく、舌を巻くような音もありません。一見すると、日本語の発音は簡単そうに思えるのかもしれません。

でも、実は「シンプルゆえの難しさ」があるのです。学習が進むにつれて、多くの日本語学習者が共通の壁にぶつかります。「単語も文法もあっているのに、なぜか日本人に聞き返されてしまう」「正しく言っているはずなのに、通じていないみたいだ」……。こうした悩みの原因は、実は「発音の根本的な仕組み」の違いにあります。これを理解すれば、あなたの日本語はぐっと伝わりやすく、自然なものに変わっていくはずです。英語を例に発音の違いについて見てみましょう。

 

音の数と母音の純粋さ:シンプルなゆえの難しさ

まず、日本語と英語の最も大きな違いは「音の数」です。日本語の母音は「あ・い・う・え・お」の5つ。世界中の言語の中でも、これほど母音が整理されている言語は珍しいといえます。

対して英語はどうでしょうか。辞書や分析の仕方にもよりますが、英語には短母音、長母音、そして「二重母音(二つの音が組み合わさったもの)」を含めると、20前後の母音が存在すると言われています。日本語の4倍もの母音を使い分けているのです。(アメリカ英語、イギリス英語、オーストラリア英語などによって数が変わるため、正確な数を特定することは難しいです)
例えば、日本語ならすべて「ア」と発音してしまう音でも、英語では「apple(æ)」「up(ʌ)」「father(ɑː)」のように、口の開き方や舌の位置で厳密に使い分けが必要です。

「じゃあ、日本語の方がずっと楽じゃないか!」と思うかもしれません。しかし、ここに落とし穴があります。英語話者が日本語を話すと、無意識に母音を「二重母音化」してしまうクセが出やすいのです。例えば「さようなら(Sayonara)」を、「サイヨゥナゥラ」のように、音を変化させながら伸ばしてしまうことがあります。日本語の母音は、最後まで形を変えない「純粋な音」であることが求められます。「あ」なら最初から最後まで、真っ直ぐな「あ」をキープする。このシンプルさを維持することが、日本語らしく聞こえるための第一歩なのです。

 

喉と口の筋肉:省エネな日本語 vs 筋トレな英語

発音をするときの「体の使い方」も全く違います。
英語の発音は、喉の奥を大きく開き、お腹から強い息を吐き出す、いわば「全身運動」に近い感覚です。特に「P」「T」「K」などの子音は、ティッシュペーパーを口の前に置いたら激しく揺れるほど、強い息(気流)を伴います。

一方、日本語はどうでしょうか。日本語は「口の表面」だけで音を作る、非常に「省エネ」な言語です。息を強く吐き出す必要はなく、口もそれほど大きく動かしません。実際に、日本人が話している様子を横から見ると、英語話者に比べて顎の動きが小さいことに気づくでしょう。

アジア圏の学習者の場合も、この違いは顕著です。例えば、「声調(トーン)」がある中国語やベトナム語を母国語とする方は、一音一音を非常に強く、はっきりと発音する傾向があります。しかし日本語でそれをやってしまうと、少し「怒っている」ように聞こえたり、リズムが硬くなりすぎたりすることがあります。日本語を話すときは、少し肩の力を抜いて、口先で軽やかに音を転がすようなイメージを持つと、より自然な響きになります。

 

シラブル(音節)の構造:母音という「壁」

英語と日本語の大きな違いの一つに、「音の終わり方」もあげられるでしょう。
英語は子音で終わる言葉(閉音節)が非常に多い言語です。例えば、仕事や勉強で使う「デスク(Desk)」という単語を考えてみましょう。英語の発音では「D-e-sk」と一つの塊で発音され、最後は「k」という子音の吐息だけで終わります。

ところが、日本語には「子音と母音は常にセットである」という強力なルール(開音節構造)があります。そのため、日本人が「Desk」を日本語として取り入れると、「デ・ス・ク」と3つの独立した音に分解し、それぞれの子音に無理やり「e」や「u」という母音をくっつけてしまうのです。他にも「Earth」が「ア・ー・ス」になるのも同じ原理です。

日本語学習者のみなさんは、これとは逆の現象に注意が必要です。日本語を話している最中に、うっかり母音を落として子音だけで終わらせてしまうと、日本語のリズムが崩れてしまいます。例えば「~です(Desu)」を英語の感覚で「Des」と発音したり、「ます(Masu)」を「Mas」と言ったりすると、日本語らしい滑らかさが失われ、ぶつ切りになった印象を相手に与えてしまいます。一つひとつの音の最後に、透明な母音がしっかり存在していることを意識するだけで、あなたの日本語はぐっと聞き取りやすくなります。

 

アクセントとリズム:高さ(ピッチ)と拍(モーラ)での違い

音の作り方をマスターしたら、次は「アクセント」と「リズム」です。この感覚をつかむことが自然な日本語への近道です。

 

高さ(ピッチ)アクセントの不思議

英語のアクセントは「ストレス(強弱)」です。強調したい音節を、ハンマーで叩くように強く、そして長く発音します。一方、日本語のアクセントは「ピッチ(高低)」です。強く叩くのではなく、ピアノの鍵盤を弾くように、音の階段を上がったり下がったりして意味を区別します。有名な例ですが、「はし」という二文字の音でも、階段の登り方で意味が変わります。※地域によって差があります。

「は(低)し(高)」=橋(Bridge)
「は(高)し(低)」=箸(Chopsticks)
「は(低)し(低)」=端(Edge)

英語圏の学習者は、つい強調したい部分を「強く」発音してしまいがちですが、日本語でそれをすると、日本人の耳にはリズムが崩れたように聞こえてしまいます。「強く叩く」のではなく「高さを変える」ことが「日本語らしく聞こえるコツ」です。

 

メトロノームのように刻む「拍(モーラ)」

また、日本語のリズムを語る上で欠かせないのが「拍(モーラ)」という概念です。
英語のリズムが、指揮者が振るタクトのようにダイナミックな波を描くのに対し、日本語のリズムは正確に時を刻む「メトロノーム」に例えられます。

特に注意が必要なのが、日本語特有の「小さな『つ』(促音)」、「ん(撥音)」、そして「ー(長音)」です。これらは英語の感覚では「音」としてカウントされにくいのですが、日本語では一音(1拍)として、他と同じ長さだけ存在感を持たなければなりません。

例えば「切手(き・っ・て)」は3拍ですが、これを急いで「き・て」と言ってしまうと、「来て(Come)」という全く別の意味になってしまいます。また「ビール(Bi-i-ru)」を短く言えば「ビル(Building)」になります。「沈黙や伸びる音も、立派な一音である」。このメトロノームのような均等なリズム感こそ、日本語の面白さであり、最も難しいポイントでもあります。

 

「たくさん話す」ことが一番の近道

ここまで、日本語と英語の発音の違いを紹介してきました。「覚えることがたくさんあって大変そうだ」と感じた方もいるかもしれません。でも、安心してください。発音は「勉強する」だけのものではなく、「慣れる」ものだからです。

頭で「ここは高低アクセントだ」「ここは1拍待つんだ」と考えているうちは、自然な会話はできません。また、理屈がわかっても、いざ話すと母国語の癖が出てしまうものです。長く母国語を話してきた「口の記憶」があるからです。
では、どうすれば日本語らしい発音が身につくのでしょうか?答えはシンプル。「たくさん話すこと」です。

リラックスした環境でたくさん話すことが、最も早く「通じる日本語」を手に入れる秘訣です。間違いを恐れずに、積極的に日本語を口に出してみてください。最初はぎこちなくても、練習を重ねるうちに、あなたの口の筋肉が日本語のリズムを覚えていきます。

日本語の発音は、「簡単」でも「難しい」でもありません。ただ、英語や母国語とは「違う」のです。その違いを理解し、たくさん練習すれば、必ず上達します。さあ、今日から日本語をたくさん話してみましょう!

 

発話の多さが自信を作るTCJのメソッド

TCJでは、授業の中での「学生の発話量」をとても大切にしています。実際に口を動かし、講師やクラスメイトと会話をする時間を多く設けることが、正しい発音とリズムを身につける唯一の方法だからです。

間違えることを恐れずに声を出すプロセスを通じて、自然と「日本語の筋肉」を鍛えていきます。講師は一人ひとりの母国語による発音のクセを理解し、あなたに最適なアドバイスを行います。理論を理解した上で、それを「無意識にできる技術」に変えていく。TCJには、そのための万全の仕組みがあります。ぜひ、私たちと一緒に「通じる楽しさ」を体感してみませんか?

 

参照資料・サイト

文化庁:日本語教育コンテンツ共有システム「日本語の音声」
東京外国語大学:言語モジュール(音声講義資料)
国際交流基金(JF):日本語教育スタンダード(発音・アクセントの重要性)
国立国語研究所:日本語のアクセント・リズム調査報告
Cambridge Dictionary:English Pronunciation and Syllable structure
NHK放送文化研究所:日本語の発音・アクセントに関する解説記事

この記事の筆者
日本語教師
ShimazakiKaori
会社員として長年働いてきた経験を生かしながら、オンラインで日本語を教えています。言葉だけでなく、日本の文化や毎日の生活についても、わかりやすく伝えることを大切にしています。
趣味は旅行・美味しいものを食べる・編み物等々。これまでいろいろな国を旅してきましたが、特にスペインが大好きです。以前、スペイン巡礼旅で約800kmを歩いた際には、美しい風景や文化にふれ、世界中から来た人たちと出会うという、本当に素晴らしい体験ができました。
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