【日本語教師が教える】日本語でよく使う表現まとめ

あなたの表現力を高める7つの日本語

日本人がよく使うのに、ニュアンスが微妙で、自分からは使いにくい、という言葉がいくつかあります。しかし上手に使えたら、まわりの友人や日本人はびっくりするでしょう。そんな言葉、7つをとりあげ、例をあげながら分かりやすく解説します。

 

まんざら

〇彼は賃上げの額を見て、まんざらでもなさそうな顔をした。
(=特に不満はない、まあまあだ、という顔をした)

〇学生時代の成績は、まんざらでもなかったようだ。
(=そんなに悪くはなかったようだ)

「まんざら~ない、でもない」のように、後に否定形の「ない」がつきます。
*それほどヒドイわけではなく、ある程度、肯定的で、受け入れられるという時に使われる表現です。日本人は、相手に対して全面的にOKとか、まったくダメとは言いません。そのために否定的な表現で「悪くはない」のようにいうことが多いのです。これは典型的な日本語表現といえるでしょう。

後にくる言葉を強調して、特に「~ではない」と否定するケース:
〇まんざら、イヤでもなさそうだ。
(=そんなにイヤでもなさそうだ)

〇アメリカ人と会話ができて、自分の英語もまんざら、ダメでもないと思った。
(=それほど悪くはない、まあまあだ、なかなかだと思った)

 

さすが

〇さすがに、あの歌手は歌がうまい。
(=プロだけあって、歌が上手だ)

〇学生時代、選手だったそうだよ。彼のプレイはさすがだねえ

相手の職業や資格・能力などを認めたり、「評判通り」「うわさどおり」などと褒める時に使います。「さすが!」とだけ言う場合もあります。

〇さすが社長、決断が早いですね。

〇(カラオケで歌っている人に)「さすがぁ!」
(=やっぱりうまいねえ)

実力などが定評や期待の通り、と褒めたり、おだてたり、ゴマをすったりする時に使う表現です。
*相手の能力を認めて褒めているので、相手はとても喜びます。しかし、よくない時や相手が失敗した場面で「さすが…」と言うと、「評判通り」よくない、失敗した、という意味になり、皮肉やからかいの意味になりますので、使う時に注意が必要です。

一方、次の場合は「いつもと違って」「特別な状況なので」という意味で強調して使われるケースです。

〇海が荒れていて、彼もさすがに、助けることができなかった。
(=普通なら助けることができる彼だけど……)

〇あまりヒドイので、さすがの私も、怒りました。
(=いつもは冷静な私も……)

 

はず

〇彼はもうすぐ来るはずです

〇そんなことはないはずだ。

もし、「来るでしょう」「ないでしょう」と言えば単なる予想・想像の表現ですが、例文のように「はず(筈)です。はずだ」と言うと「不確かだが、それなりに理由・根拠がある」「確実性が高い」という意味をもった言葉になります。
*少なくとも「さっき、近くで彼に会ったから」とか、「彼はきのう、『行く』といっていた」とか、何かその判断に理由がある時に使う強い表現です。そのために、相手からは「どうしてわかるの?」「なぜ?」と説明を求められることが多くなります。

〇彼女が万引き(店のものを盗むこと)などするはずがない
はずがない」は、彼女の平素の態度などから、そんなことはありえない、と強い調子で否定する時に使います。

〇あれだけ練習したのだから、負けるはずがない
などと、理由をつけて言うこともあります。
「負けることはありえない」という強い主張なので、「~でしょう」と、少しトーンを和らげていうこともあります。

〇太陽が西から昇るはずがないでしょう
*普通、自分のことはよくわかっているので、「はず」はあまり使わず、「私は~する予定だ」のように言います。ただし、特種な状況では使うことがあります。たとえば、秘書が自分の行動の管理をしている場合や、飛行機に乗るなど、自分の意思とは関係なく動いていく場合などです。たとえば、

〇12時の便で行きますので、そちらには14時ごろには着くはずです。
*この「はず」を「予定」と同じだと誤解して、
×「私は、今日午後、新宿にいくはずです」×
などという人がいますが、まちがいですので、気をつけましょう。

 

せめて

〇海外旅行にいくなら、せめて300ドルぐらいは用意しなさい。
(=少なくても、最低でも……)

〇一流大学は無理としても、せめて地元の大学には受かりたい。
(=希望どおりではないが……、満足ではないが……)

それで満足できるわけではないが、それでも、少なくとも……、と譲る気持ちなので、「せめて~ても、でも、ぐらいは……」などの形をとることが多い。

〇忙しいでしょうが、せめて挨拶だけでもしていってください。
(=他のことはともかく、最小限、挨拶だけは……)

 

せっかく

〇せっかく旅行に行ったのに、雨ばかり降っていた。
(=忙しいところを無理して……)

〇せっかく料理を作ったのに、彼は食べないで帰ってしまった。
(=彼のために力を入れて……)

なにか特別の思いをもってやったのに、それにもかかわらず……と、努力や期待、あるいは好意や幸運などが無駄になって残念だと恨むような場合に使います。

また以下のように、ある人が努力・尽力してくれたことや、めったにないチャンス・幸運に恵まれたので、それを無駄にしないようにという気持ちを込めて言う時にも使われます。

〇せっかく来てくれたんだから、一杯やろうよ。
(=わざわざ遠くから来たから、それを無にしないように……)

〇せっかくの機会なので、みんなで一緒に写真を撮ろう。
*事情や状況がわかっている場合は、特に説明を加えず、ただ「せっかくだから……」とだけ言うこともあります。

 

よほど(よっぽど)

〇彼はいつもカメラを持って歩いているけど、よほどカメラが好きらしい。
(=特別に、相当……)

〇よほどのことがない限り、参加します。
(=特別なこと、大変なこと)

〇彼女がそんなことを言うなんて、よっぽどのことだよ。
(=とても深く感じている、あるいは、怒っている、など)

「程度がはなはだしい」「特別だ」という場合に使われ、人の言動や態度についていうことが多い表現です。「よっぽど」は強調した言い方。

〇腹が立ったので、よっぽど本当のことを言ってやろうかと思った。

〇留学生活が苦しくて、よほど帰国しようかと思ったが、帰らなかった。

*この場合の「よほど」は、「いっそ」などと同じように、「迷ったけど、思い切って……」というようなニュアンスで使われていますが、実際には行動に移さないで、ただ「強くそう思った」ことを伝えたい時に使います。

 

ながら

〇テレビを見ながら食事をする。
(=見ると同時に……)
これは、なにか二つのことを平行して行う時によく使われる言い方です。ところが以下の例はどうでしょう? 上の例と混同して意味がよくわからないという学習者もいるので注意が必要です。

〇自分で言っていながら、意味がよくわかっていない。
(=自分で言ったのに……)

〇先生でありながら、こんな簡単なことも知らない。
(=先生なのに……)

これも二つの行為が平行して行われていることに違いはありません。しかし、この場合は二つの行為が、互いに矛盾している、と言っているのです。批判していると言ってもいいでしょう。もっと簡単に、以下のように言う例もよく見られます。

〇失礼ながら、田中さんですか?
(=失礼ですが……)

〇若輩ながら、なかなかすばらしい。
(=若い人だけど……)

 

まとめ

さて、以上7つの言葉、使えそうですか? これだけ覚えるだけで、あなたの表現の幅が格段に広がり、友だちはみんな、「エッ、そんな言葉知ってるんだ!」とびっくりするでしょう。こういう言葉は、実際に使われる場面や状況の中で覚えたり、たくさんの例文で勉強したりするのが一番です。さらにTCJのような学校でネーティブの先生と一緒に勉強するといいでしょう。

 

この記事の筆者
日本語教師
MoritaRokuro
プライベート・レッスン講師。出版社で雑誌・単行本・辞書編集などを担当した後、中国・北京の大学で12年、日本語・日本文化・剣道を教える。帰国後は、東京中央日本語学院で日本語講師。趣味は音楽、剣道(教士七段)。著書に『北京で二刀流』(現代書館)、『日本人の心がわかる日本語』(アスク出版)など。
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