きれいな漢字の書き方――ポイント4つ

きれいな漢字を書きたい!多くの人がそう思っているのは確かです。しかし、具体的にどうすればいいでしょうか?ここでは、まず漢字の形と構成要素について学び、その視覚的なバランスについて考えます。そしてきれいに書くための具体的な方法、教材などを紹介します。

 

非漢字圏の学習者を中心に

だれでも美しい漢字を書けるようになりたいと思っています。

平素から漢字を読み書きしている中国や日本では、小学校に上がると漢字を習い始め、中国では練字(lianzi)、日本では習字(しゅうじ)といって、学校で基本的な漢字の書き方を勉強します。さらに中国では書法(shufa)、日本では書道(しょどう)というように、文字に特別に芸術的価値を認めて、毛筆で書くことも盛んに行われています。

ですから、ここでは日常、漢字を使わない国の人々、たとえば欧米やフィリピン、ベトナムなどの人々が日本語を学び始め、漢字を学習していて、どうすれば美しい漢字が書けるかを考えている人たちを対象にお話したいと思います。

英語でもペンマンシップ(penmanship)という言葉があるように、アルファベットを使う国の人々は、文字を美しく書くための書き方や、英語の運筆、書写を学校で習いますし、もっと本格的にはドイツの花文字など、装飾的な書法も含めてカリグラフィー(calligraphy)と呼ばれるものもあります。

しかしアルファベットなど、基本的に音を表す文字に対して、漢字は文字の一つ一つに「意味」と「音」があるために、字形も複雑になり、文字の種類も非常に多いのです。それだけに初めて漢字に出会って、それを書こうとしてもなかなかうまくいかないのは当然でしょう。

 

第一のおすすめ――原稿用紙に書いて練習する

そこで美しい漢字を書くために、まず第一にお薦めしたいことは、文房具店などで売っている原稿用紙を使って、漢字を書く練習をすることです。原稿用紙というのは、四角のマス目「□」が1行20個、10行または20行にわたってならんでいるシートで、作家や専門家はもちろん、普通の人もなにか、ものを書く時に必ず使ったものです。しかし、現在はパソコンが普及して、原稿用紙を使う機会は、学校以外ではほとんどなくなりました。

原稿用紙では一つのマス目「□」に一つの文字を書き入れるのですが、漢字というのは、基本的に四角い文字ですから、この「□」の中にきちんと収まるように漢字を書く練習をするようにします。そうすると自然に四角い文字である漢字をバランスよく書くことができるようになります。

原稿用紙は安いものですから、文房具店で自分に合うものを買ってもいいですし、ネット上で「原稿用紙」と入力して検索すると、PDFなどの形式でダウンロードできるサイトがたくさんありますので、それをプリントアウトしてもいいでしょう。マス目があまり小さいと漢字の練習用としては適当ではありませんので、少し大きくプリントしたほうがいいでしょう。書いたり直したりするためには、鉛筆(またはシャープ・ペンシル)で書いたほうがいいでしょう。

 

第二のおすすめ――漢字の構造を知る

漢字は基本的に四角い形をしていて、しかも多くの漢字は構造からいって左右か上下に分解して見ることができます。そしてその左右・上下に分かれた要素(element)に、意味や音を持たせています。漢字はこの要素を組み合わせることによって、できあがっているのです。複雑な文字ほど、このような構成要素によって成り立っているといえるでしょう。

たとえば、

語、話、記、識、訳

などの字を見ると、左側(「へん」という)に「言」がありますが、これは「ことば」を意味していて、言語や知識・知能に関係する意味をもつ漢字なのです。

胴、銅、洞、恫、桐

などの字には、右側(「つくり」という)に「同」がついていますが、これは「ドウ・トウ」という音を表わす漢字の構成要素となっています。また、

家、室、宿、宅、宮

などの字には、上部(「かんむり」という)に「ウ」のような字がついていますが、これらは、みな建物、家と関係ある漢字です。

買、貢、貧、費、貴

などの漢字には、下部に「貝」がありますが、昔は「貝」はお金として通用していたことから、これらはすべてお金や財産にかかわる意味をもった漢字なのです。

このように、ほとんどの漢字は基本的に左・右か上・下の構造で、四角い形をしていますので、この構造と意味を考えながら、形を整えることが大切です。画数(number of strokes)の少ない漢字(後述)は、四角とはいえず、バランスが取りにくいものが多いのです。たとえば「小」「止」「久」「人」のように下方が大きいもの、「了」「丁」「寸」「子」「不」「千」など上方が大きいもの、また「女」「丈」「夕」「寸」「勺」などの漢字は、形を整えるのが難しいので、その点に注意しながら練習するといいでしょう。

 

第三のおすすめ――漢字の書き順・筆順を知る

漢字には、たとえば「一」のように線を単純に1本引くだけのものから、憂鬱(ゆううつ)の「鬱」の字のように何十もの線を引いて書くものまで、いろいろあります。このようにして書く線の1本1本を筆画(ひつかく)または画(かく=stroke)といいますが、「一」は一画の漢字、「二」は二画、「鬱」は二十九画の漢字ということになります。そして画数(number of strokes)が一画の漢字であっても二十九画の漢字であっても、漢字にはだいたい書く順序があります。この順序のことを書き順、または筆順(ひつじゅん=order of strokes)といいます。

美しい漢字を書くためには、この書き順の順序で書くことがとても大切です。筆順(書き順)は、長い間に経験的にまとめられたもので、この順序で書くと、バランスのとれた漢字が自然に書けるだけでなく、スムーズで書きやすく、早く書けるようになります。自分の書いた字の形がなんとなく変だと思う人は、書き順を間違えているかもしれません。

たくさんある漢字の書き順を覚えるのは大変だと思う人もいるかもしれませんが、実は漢字一つ一つの書き順を覚える必要はありません。そのルールは、多少の例外はありますが、とても簡単なものですので、それさえ覚えてしまえば、大抵の漢字は共通して書けます。それも美しい漢字を書く練習をしながら覚えればいいのです。ペンや筆は普通、右手で持ちますから、基本は左から右へ、上から下へ。そして線が交わるときは横線から書きます。分からない時やさらに詳しく知りたい人は、学習用の漢字辞典や筆順字典を引くか、アニメーションで解説してくれるサイトなどをみれば、わかります。

 

第四のおすすめ――さらに美しい漢字へ

もっと具体的に美しい漢字を書く方法を知りたい人は、書店などで習字のテキストを買って勉強するといいでしょう。小中学生を対象としたものが多いのですが、バカにしてはいけません。なぜなら漢字使用圏の人は、みなそれらを使って勉強して覚えたのですから……。

さらに、どうしても自分一人では勉強できないという人は、街で漢字を書くための教室を探すのもいいでしょう。習字・書道教室というのは毛筆を教えるところが多いのですが、硬筆(鉛筆・ペン)の習字が学べるところもあります。住んでいる地域の教室や通信添削講座をネットで探すとたくさんでてきます。大人向けと子ども向けと分かれている場合もありますので、事前に確認するようにしましょう。

 

字は人なり

文字は形の美しさより、早く多く書けることのほうが重要だと思っている人もいるでしょう。しかし、いくら早く書けても、後で自分が書いたメモを読んでみて、どんな字かわからないのでは意味がありません。それに、文字は他の人に読んでもらうために書くこともあります。美しく書かれた文字をみて、その人柄まで想像することもあります。日本には、「文字は人なり」ということわざもあります。漢字を勉強して、自分でも美しい字を書きたいと思う人は、いちどTCJの先生に相談してみてください。

 

この記事の筆者
日本語教師
MoritaRokuro
プライベート・レッスン講師。出版社で雑誌・単行本・辞書編集などを担当した後、中国・北京の大学で12年、日本語・日本文化・剣道を教える。帰国後は、東京中央日本語学院で日本語講師。趣味は音楽、剣道(教士七段)。著書に『北京で二刀流』(現代書館)、『日本人の心がわかる日本語』(アスク出版)など。

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