JLPT(日本語能力試験) N5はどのようなレベル?どんな問題がでるの?

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本記事では、日本語学習の第一歩であるJLPT N5について、2024年の最新データや試験傾向を基に徹底解説します。合格に必要なレベル、出題形式の詳細、そして取得のメリットを網羅しました。日本語教師の視点から、独学では気づきにくい合格のポイントもお伝えします。

 

JLPT(日本語能力試験)N5とは

日本語学習を始めたばかりの皆さんにとって、最初の大きな目標となるのがJLPT N5です。世界最大規模の日本語試験であるJLPT(日本語能力試験)は、N1からN5まで5つのレベルに分かれており、N5はその入り口にあたります。

 

基本的な日本語の理解

N5の認定基準は「基本的な日本語をある程度理解することができる」レベルと定義されています。具体的には、ひらがなやカタカナ、そして日常生活で用いられる基本的な漢字(約100字程度)を読み、定型的な挨拶や表現を理解できるかが問われます。

また、教室や身の回りなど、日常的な場面でゆっくり話される短い会話から、必要な情報を聞き取る力も求められます。いわゆる「サバイバル・ジャパニーズ(生活するために最低限必要な日本語)」を習得しているかどうかの証明と言えるでしょう。

 

試験科目と時間の変更

れから受験する方が特に注意すべきなのは、試験時間の変更です。2020年12月の試験から、N4とN5の試験時間が短縮されました。

現在のN5の試験構成は以下の通りです。

言語知識(文字・語彙):20分(以前は25分)
言語知識(文法)・読解:40分(以前は50分)
聴解:30分(変更なし)

合計で以前より15分短くなっています。特に文字・語彙」のセクションが5分短縮された影響は大きく、問題を解く「スピード」がより重要になりました。「ゆっくり考えればわかる」状態ではなく、「見て瞬時にわかる」状態まで仕上げておく必要があります。

 

合格点の仕組み

N5に合格するためには、総合得点(180点満点)で80点以上を取る必要があります。しかし、それだけでは合格できません。「言語知識・読解」と「聴解」の各区分に基準点(足切り点)が設けられており、一つでも基準点を下回ると、総合得点が高くても不合格になります。バランスよく学習することが合格への鍵です。

 

JLPT(日本語能力試験)N5を目指すのはどういう人?

2024年のJLPT応募者数は全世界で約172万人に達し、過去最高を記録しました。その中で、N5を目指す受験者にはどのような背景があるのでしょうか。大きく分けてつのタイプが挙げられます。

1)  日本への留学を目指す学生

最も多い層の一つが、日本の大学や専門学校、日本語学校への留学を希望する学生です。留学ビザを申請する際、入国管理局(出入国在留管理庁)に対し、学習意欲と基礎能力の証明として「日本語学習歴150時間以上」または「JLPT N5相当以上の合格」が求められるケースが多くあります。N5の合格証書は公的な証明書類として信頼性が高いため、スムーズなビザ取得のために受験する方が非常に多いです。

2)  特定技能(介護)や就労を目指す方

近年急増しているのが、就労を目的とした受験者です。特に「特定技能」ビザの取得を目指す場合、原則としてN4以上の合格が必要ですが、「介護」分野においては、N5レベルの知識が実務研修や導入教育の基礎として極めて重要視されます。また、インドネシアやフィリピンなどのEPA(経済連携協定)に基づく介護福祉士候補者にとっても、N5程度が入国の要件となる場合があります。N5は、日本で働くためのキャリアの「最初の一歩」として機能しています。

3)  自身の学習進度を確認したい学習者

趣味や教養として日本語を学んでいる方にとっても、N5は最適なマイルストーンです。日本語は、ひらがな・カタカナ・漢字と表記体系が複雑で、初級段階で挫折しやすい言語と言われています。漫然と勉強するのではなく、「N5合格」という明確な目標を設定することで、モチベーションを維持しやすくなります。合格という「成功体験」を得ることで、次のN4N3へと進む意欲が湧いてくるのです。

 

JLPT(日本語能力試験)N5 合格にメリットはある?

「N5は一番下のレベルだから、取っても意味がないのでは?」と考える方もいるかもしれません。しかし、実際にはN5合格には実用的なメリットが数多く存在します。

1)  日本での生活の立ち上げがスムーズになる

N5レベルの語彙(約800語)と表現を習得していると、日本での生活の質が大きく変わります。スーパーでの買い物、電車のアナウンスの理解、簡単な道案内など、生活の場面で「何が起きているか」を把握できるようになります。全く日本語が分からない状態と比べ、生活上のストレスやトラブルが大幅に軽減されます。

2)  アルバイト採用のチャンスが広がる

留学生として来日した場合、多くの人がアルバイトを探します。N5レベルがあれば、コンビニエンスストアのバックヤード業務、工場のライン作業、清掃業務など、マニュアル化された定型的な業務であれば採用される可能性が高まります。特に人手不足が続く日本において、「指示された簡単な日本語が理解できる」という証明は、雇用主にとって大きな安心材料となります。

3)  学習の「基礎」が固まっていることの証明

N5の範囲は、日本語の文法の基礎中の基礎です。「て形」「ない形」「辞書形」といった動詞の活用や、基本的な助詞の使い方は、上級レベルになっても使い続ける重要なルールです。N5に合格するということは、この土台がしっかりしていることの証明になります。逆に言えば、N5の内容があやふやなままN4以上の勉強に進むと、必ずどこかで伸び悩みます。

 

JLPT(日本語能力試験)N5は出題形式と出題例を解説

ここでは、具体的にどのような問題が出るのか、セクションごとに解説します。対策のポイントも併せて紹介します。

1)  言語知識(文字・語彙)

このセクションでは、漢字の読み方や、適切な言葉を選ぶ力が問われます。

漢字読み
文中の漢字(例:「新しい」)の読み方をひらがなで選びます。

表記
ひらがな(例:「やま」)を正しい漢字(「山」)やカタカナにする問題です。

文脈規定
文の意味に合う単語を選びます。
(例:「朝、顔を(  )。」
「洗います」)

言い換え類義
ある文とだいたい同じ意味の文を選びます。
(例:「誕生日は
11日です」≒「11日に生まれました」)

対策のポイント
試験時間が20分と短いため、1問あたり数十秒で解くスピードが必要です。N5で必要な漢字は約100字ですが、形が似ている漢字(「人」と「入」、「日」と「白」など)のひっかけ問題に注意しましょう。

 

2)  言語知識(文法・読解)

初級学習者が最も苦戦しやすいのがこのセクションです。

文法形式の判断
適切な助詞(は、が、を、に、で)や動詞の活用形を選びます。

文の組み立て(星印問題)
四つの選択肢を並べ替えて正しい文を作り、★マークの場所に入る言葉を答えます。これは日本語の語順(S-O-Vなど)を論理的に理解していないと解けません。
例:「わたしは _ _ ★ _ 行きます。」
(選択肢:①図書館 ②へ ③勉強 ④しに)
正解の文は「わたしは 図書館 へ 勉強 しに 行きます」となるので、★に入るのは③です。

読解(短文・中文・情報検索)
短い手紙やメール、また「お知らせ」や「メニュー」を見て、必要な情報を探す問題です。

対策のポイント
文法・読解問題では、すべての文章を完璧に翻訳する必要はありません。「いつ」「どこで」「なにをなどを表すキーワードを素早く見つける練習(スキャニング)が有効です。

 

3)  聴解

声を聞いて答える問題です。N5の音声は、実際の会話よりもかなりゆっくり、はっきり話されます。

課題理解
「男の人はこれから何をしますか」といった具体的な行動を聞き取ります。

ポイント理解
まず質問を聞き、その後で会話を聞いて、理由や原因などを答えます。

発話表現
イラストを見ながら、特定の状況(食事の前の挨拶、謝罪など)で何と言うかを選びます。

時応答
短い質問(例:「元気ですか?」)に対し、すぐに正しい返事(例:「はい、元気です」)を選びます。

対策のポイント
最後の「即時応答」は瞬発力が勝負です。頭の中で母国語に翻訳していると間に合いません。普段から日本語の音に慣れ、反射的に答えるトレーニングが必要です。

 

TCJで学習することは日本語能力試験に役立つ?

TCJでは「読む・聞く・話す・書く・やり取り」の5技能バランスよく伸ばす教育を行います。授業での会話練習が、聴解の「即時応答」に必要な瞬発力を養います。また、作文指導は、文法問題の構成力理解に直結します。日本国内の受験者は海外より合格率が高く、TCJのような専門機関での総合的日本語学習は、合格への最短ルートとなり得ます

 

文献紹介

日本語能力試験JLPT(2020)「N4およびN5の試験時間・問題数の目安の変更について」

出入国在留管理庁(2023)「日本語教育機関への入学をお考えのみなさまへ」

日本語能力試験JLPT(2024)「過去の試験のデータ 2024年第1回(7月)・第2回(12月)」

この記事の筆者
日本語教師
TajimaKoji
日本語教師の仕事を始めて40年ほどになる。1988年国立国語研究所「日本語教育長期専門研修課程」修了(約1000時間の研修)。同年第1回「日本語教育能力検定試験」合格。これまでに、国際協力NGO、日本語学校、文化庁国語課、大学・大学院で日本語教育の仕事に携わり、多種多様な外国人に日本語を教えたり、日本語教師養成を行ったりしてきた。また、2014年には、6大陸、26か国の世界一周調査旅行を実施した。現在は、大学院とTCJで非常勤講師をしている。

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