ネットでよく使われる日本語のスラング「草(w)」「推し」「沼」とは? ~教科書には載らない“SNSの日本語”を解説 ~
みなさんは、普段どんな場面で日本語に触れていますか。
日本に住んでいない方や、日本語を話す環境にない方は、SNSや動画から日本語を学んでいることも多いのではないでしょうか。実際、私の学生にも「YouTubeで勉強しています」という人がたくさんいます。
そのYouTube。コメント欄をのぞくと、やたらと生えている「草」。
植物の話ではありません。誰かがボケると、生える。 予想外の展開でも、生える。初めて見たとき、少し戸惑いますよね。
こうした表現は教科書には出てきません。 でも、SNSでは毎日のように目にします。
この記事では、ネットでよく使われる日本語スラングの中から、 特に遭遇率の高い3つを現役日本語教師が成り立ちから紹介します。見たことがある言葉から一緒に整理していきましょう。
草(w)【遭遇率:★★★★★】
意味
「おもしろい」「笑った」という意味で使われます。声を出して笑うほどではないけれど、 思わず笑ってしまった、という軽いニュアンスです。
なぜ「草」なの?
もともとは「(笑)」という表現から始まりました。それがインターネット上で「w」と略されるようになります。この「w」は「笑い(warai)」の頭文字です。
さらに、笑いが多いと「wwwww」のように並べて書くようになりました。すると、この並んだ「w」が、 草が生えているように見える、ということで「草」と呼ばれるようになったのです。
つまり、
(笑)
→ w
→ www
→ 草
という流れです。
使い方
コメントやSNSで、とてもカジュアルに使われます。
「その発想は草」
「展開が急すぎて草」
「それはさすがに草」
文章の最後につけることもあれば、 「草」だけでコメントすることもあります。また、「w」だけを書く人もいれば、 「草」と漢字で書く人もいます。
推し(おし)【遭遇率:★★★★☆】
意味
自分が特に応援している人・キャラクター・存在のことです。 アイドルや俳優だけでなく、キャラクター、スポーツ選手、さらにはアニメや食べ物にまで使われることがあります。下記は例文です。
「私の推しはこのアイドルです」
「最近、新しい推しができました」
「この店のカレーが推しです」
もともとの意味は?
「推し」は、動詞の「推します」から来ています。「推薦する」「強くすすめる」という意味です。もともとはアイドルファンの間で、 「自分が特に応援しているメンバー」を「推しメン(推しているメンバー)」と呼んでいました。
そこから「メン」が消えて、「推し」だけが残り、今では一般的な言葉になりました。
つまり、
推す → 推しメン → 推し
という流れです。
なぜこんなに広がったの?
日本のSNSは、「好き」を語る文化がとても強いです。誰かを応援する。 何かを大切に思う。その気持ちを一言で表せる便利な言葉が「推し」です。「推し」は比較的安全に使える言葉です。 ただし、目上の人やフォーマルな場面では、「好きな俳優」「応援している選手」などと言い換えたほうが自然です。
また、
「推しが尊い」(推しがすごく良い)
「推し活」(推しのための活動。コンサートやグッズ購入など)
のように、他のネット表現と組み合わさることもよくあります。
沼(ぬま)【遭遇率:★★★★☆】
意味
何かに強くハマってしまい、抜け出せなくなっている状態を表します。
本来の「沼」は、一度入ると簡単には出られない場所です。そのイメージから、趣味や作品にどっぷりハマることを「沼」と言うようになりました。
使い方
「このアニメ、完全に沼です」
「気づいたらアイドルの沼にいました」
「一話だけのつもりが、完全に沼でした」
また、「〇〇沼」という形でもよく使われます。「ドラマ沼」「コスメ沼」「キャラ沼」など、対象はさまざまです。
なぜ広がったの?
「推し」と一緒によく出てくるのが「沼」です。日本のネット文化では、「好き」よりももう一段深い状態を表す言葉がよく使われます。「好き」よりも強い。「ハマる」よりも抜けられない。
その感覚を、少し大げさに、そしてユーモアを込めて表したのが「沼」です。「抜けたいのに抜けられない」という気持ちを、楽しそうに表しているところが面白い表現です。
学習者へのポイント
「沼」は基本的にポジティブな意味で使われます。悪いことにハマる、というニュアンスではありません。
まとめ
今回の記事では、「草」「推し」「沼」という3つのネットスラングを紹介しました。
教科書には出てきません。 試験にも、まず出ません。でも、SNSをのぞくと、毎日のように出会います。コメント欄に草が生え、 誰かが新しい推しを語り、そして気づけば、どこかで沼に落ちています。日本語は、思っているよりずっと遊び心のある言語です。
草を見ても、もう不思議に思わなくて大丈夫です。推しの話にも、自然についていけるようになります。誰かが沼に落ちていても、「ああ、これは楽しいほうの沼だな」と笑えるようになります。
こうした表現も、日本の文化の一部です。まじめな日本語だけが、日本語ではありません。
日本語学習を頑張っているみなさんには、ぜひ、こうした“ちょっと遊び心のある日本語”も楽しんでほしいと思います。全部を使いこなす必要はありません。まずは「意味が分かる」こと。 それだけで、SNSの世界が少しだけ楽しくなります。
TCJで一緒に学びませんか
TCJでは、教科書の日本語だけでなく、実際に使われている日本語や、その背景も大切にしています。クラス授業では、みんなの疑問を一緒に解決していきます。個別授業では、SNSで見かけた言葉を実際に使ってみたいけれどクラスで聞くのは少し恥ずかしい、という方も安心して質問できます。
分からない言葉に出会ったら、そのまま持ってきてください。一緒に考えて、 一緒に笑って、 気づけばどこかで日本語沼にハマっているかもしれません。もちろん、楽しい沼です。むしろ、「もう少し深く入りたい」と思ってしまうかもしれません。
そんな日本語の世界を、TCJでぜひ一緒に楽しみましょう。