同じ漢字なのに違う読み方?意味も違うの?つまづきやすい漢字を解説

日本語を学んでいると、「この漢字、前に習った読み方と違うけれど、間違い?」「同じ漢字なのに、意味が全然違うように見える」と戸惑う場面に何度も出会います。
日本語には、一つの漢字(あるいは漢字の組み合わせ)に対して複数の読み方と意味が存在する語が数多く存在します。読み方が変わるだけで、指している対象が変わったり、抽象的な評価になったり、具体的な状態描写になったり…。

今回は、特に学習者がつまづきやすく、日常でも目にする「銀杏・上手・人気・流石」という4つの語を取り上げ、読み方と意味の違い、どんな場面で使われるのか、日本人はどうやって読みを判断しているのかを例文とともに解説します。

 

同じ漢字なのに違う読み方

まず前提として、日本語の漢字には次のような特徴があります。

・音読み:漢字が中国から伝わったときの読み

・訓読み:日本にもともとあった言葉に漢字を当てた読み

・熟字訓:複数の漢字をまとめて、日本語固有の読みを与えたもの

このため、一つの漢字(あるいは漢字語)が複数の読みと意味を持つことがあります。

読み方が変わる理由は、主に次の3つに整理できます。

1. 指す「モノ」が変わる(木そのものか、実かなど)

2. 話し手の「視点」が変わる(評価なのか、位置・立場なのか)

3. 文脈が変わる(評判の話なのか、人の存在の話なのか)

日本人はこれらを無意識に文脈から判断しています。それでは、具体的な例を見ていきましょう。

 

銀杏「いちょう」「ぎんなん」

秋になると街を黄金色に染める「銀杏」。この漢字を見て「いちょう」と読むか「ぎんなん」と読むか、迷ったことはありませんか?実は、この二つは「木そのものを指すのか」「その実を指すのか」によって読み分けられています。

例1) 校庭に銀杏(いちょう)の木が植えてあります。

例2) 茶碗蒸しに銀杏(ぎんなん)が入っています。

同じ漢字ですが、植物そのものを指すときは「いちょう」、実(食材)を指すときは「ぎんなん」と読みます。意味の違いがはっきりしているため、読み方も完全に固定されています。

使い分けのポイントとしては、空を見上げて「綺麗だな」と思うときは「いちょう」、お皿の上を見て「おいしそう(あるいは独特な臭いがするな)」と思うときは「ぎんなん」と使い分ければ間違いありません。

 

上手「じょうず」「かみて」「うわて」

「上手」は、意味の方向性が大きく異なる代表例です。

例1) 彼は日本語がとても上手(じょうず)です。

例2) その俳優は上手(かみて)から登場しました。

例3) 彼のほうが私より一枚上手(うわて)だ。

「じょうず」は日常会話で頻繁に使われ、能力・技能についての評価を表します。

「かみて」はやや専門的で、舞台・演劇・伝統芸能・スポーツなど特定の文脈で使われる語です。舞台や場所の位置を表します。対になる言葉として「下手(しもて)」があります。

「うわて」は、相手よりも能力や策略が一段階上であることを指す場合に使われます。

「彼は上手だ」という一文だけでは、彼が「器用(じょうず)」なのか、それとも「一枚上(うわて)」なのか判断が難しいことがあります。

「技能の話→じょうず、舞台・空間の話→かみて、人間関係・駆け引き→うわて」と、話題の方向性(視点)で読みが決まります。

 

人気「にんき」「ひとけ」

「人気」は、初級で「にんき」を習ったあとに「ひとけ」が出てきて混乱する学習者が多い語です。

例1) あのアニメは若者に人気(にんき)がある。

例2) 夜の公園は人気(ひとけ)がなくて怖い。

「人気(にんき)」は、世間からの評価・好かれている状態を表し、「人気(ひとけ)」は、人がいる様子・気配を表します。「人気(ひとけ)がない」は定型表現として覚えられることが多いでしょう。

もし「人気のない店」という文章を「にんきのないみせ」と読めば、「流行っていない、魅力のない店」という意味になります。しかし、これを「ひとけのないみせ」と読めば、「隠れ家のような、客が一人もいない静かな店」というニュアンスになります。 読み方ひとつで、その店に活気があるのか、それとも静寂が包んでいるのかが180度変わってしまうのです。

 

流石「さすが」「りゅうせき」

最後は、意味だけでなく使用頻度にも大きな差がある語です。

例)流石(さすが)プロですね。

これは、期待どおりで感心する気持ちを表します。

「さすが」は会話でも文章でも頻繁に使われますが、「流石(りゅうせき)」のほうは、漢語的・文語的な読みで、 現代日本語ではほぼ使われていません。辞書には載っていても、「実際には使わない読み」があることも、日本語の難しさの一つです。

日本人は、次の情報を無意識に組み合わせて判断しています。

・何について話しているか(物・人・評価)
・どんな場面か(食事・舞台・夜道など)
・一緒に使われている語(怖い・上手・登場するなど)

 

同じ漢字なのに違う読み方の特徴

同じ漢字なのに、読み方も意味も違う言葉は、日本語学習者にとって大きな壁です。
しかし、こうした語には次の特徴があります。
・意味の違いがはっきりしている
・使われる場面がある程度決まっている

そのため、「読み方を2つ暗記する」のではなく、「どんな場面で、何を表すときに使うのか」を例文と一緒に学ぶことが重要です。
同じ漢字の「別の顔」に気づけるようになると、読解力も表現力も一段階レベルアップします。

ぜひ、身近な文章や会話の中で、「この漢字、どの意味で使われているんだろう?」と立ち止まって考えてみてください。

 

TCJで日本語を学ぼう

いかがだったでしょうか?同じ漢字なのに違う読み方の単語を、使う場面や状況を1人で見極めながら勉強していくのは難しそうですね。

TCJでは平仮名、漢字から文法、会話まで一貫して学ぶことができます。TCJの先生、クラスメイトと一緒に日本語学習を進めてみてはいかがでしょうか?

 

この記事の筆者
日本語教師
NakamuraMachiko
日本語学校や国際交流協会、語学スクール、企業などで日本語を教えて約20年。TCJではプライベートレッスンを担当し、最近は技能実習生にも教えている。学習者の「楽しかった」という声が励みになっている。

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